西上州(群馬) トヤ山(1220m)、毛無岩(1300m)、黒滝山(870m)、五老峰(880m)、鷹ノ巣山(767m) 2022年2月5日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 6:37 黒滝山駐車場−−6:47 不動寺−−6:54 鷹ノ巣山方面分岐−−8:33 トヤ山−−8:49 送電鉄塔直下−−9:21 毛無岩分岐−−9:31 アイゼン装着−−9:42 毛無岩−−9:57 縦走路(休憩) 10:06−−11:29 黒滝山分岐−−11:40 黒滝山(休憩) 11:51−−11:56 登山道−−12:06 馬ノ背入口−−12:26 鷹ノ巣山分岐−−12:33 五老峰−−12:41 鷹ノ巣山分岐−−12:57 鷹ノ巣山−−13:20 五老峰分岐−−13:37 不動寺分岐−−13:41 不動寺−−13:47 黒滝山駐車場

場所群馬県甘楽郡南牧村/下仁田町
年月日2022年2月5日 日帰り
天候晴後雪後晴後時々雪(不安定な天候)、北西の風強し
山行種類ほぼ一般登山
交通手段マイカー
駐車場不動寺手前に2箇所駐車場あり
登山道の有無ほぼあり
籔の有無無し
危険個所の有無毛無岩とトヤ山で低灌木の急斜面あり。馬ノ背は痩せ尾根、梯子、鎖あり。雪が付くと厄介なので無雪の時に登るべき
山頂の展望トヤ山:東側はそこそこの展望あり
毛無岩:文句なしの大展望
黒滝山:無し
五老峰:大展望
鷹ノ巣山:西側に開ける  
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コメント不動寺から黒滝山を経由してトヤ山、毛無岩を往復し、その後は五老峰、鷹ノ巣山を往復。以前は黒滝山〜荒船山への縦走路があるが今では整備されず放置状態だが、今でも道は明瞭に残っており毛無岩直下まで安全に歩けるし藪漕ぎ不要。西上州らしく岩場があり雪があると通過が危険な場所があり無雪期が望ましいが、この日は冬型が強くこのエリアでも雪が降って10本爪アイゼンを使った。雪が無ければ適度のスリルを楽しめる程度の危険度である




不動寺下の立派な駐車場 案内図。荒船山まで縦走路が描かれている
不動寺山門前から登山道に変わる 登山道の案内
林道のような広い道に出た箇所の案内標識。右の荒船山方面へ 黒滝山へ続く尾根に乗る
966m峰を巻き始める箇所 966m峰北東側。立派な橋が健在
966m峰北西側で分岐する破線の道。高原と出ているが廃道化している トヤ山南側直下。しっかりした石垣
トヤ山分岐。案内標識は無い 尾根に乗ると岩場登場。踏跡は左側の斜面を巻く
岩の左を巻いている最中。半端な雪がやっかい 吹雪のトヤ山山頂。Gさん標識あり。東を見ている
トヤ山から西を見ている トヤ山西側の岩場から西を見ている。雪で煙る
岩場を巻き終わって安全な尾根に変わる 1160m鞍部の手すり
送電線巡視路分岐 柏崎刈羽原発からの送電線
1275m峰東の1270m肩付近 毛無岩東側の1240m鞍部付近。この先で毛無岩との分岐あり
1240m鞍部で縦走路から尾根に乗る 毛無岩のピーク。平坦部へ至るまでがヤバそう
長靴に10本爪アイゼン装着 岩の上に半端な積雪で厄介
尾根右側を登る核心部。岩ではなく急斜面 毛無岩山頂
丸い穴に何か立っていたらしい 山頂標識
灌木に掴まって核心部を下る 微小ピークを越えれば安全地帯
1240m鞍部付近で風を避けて休憩。まだ雪が降りしきっている 1275m峰西側の1250m付近
奥のピークが毛無岩 1230m峰南側から見たトヤ山
西側直下から見たトヤ山。すっきり見える場所は無かった トヤ山分岐
南からトヤ山を見上げる。一時的に天候が回復 966m峰巻き道の崩壊箇所。ロープがあるが不要
黒滝山分岐。左の尾根を直進 道はあるような無いような。でも藪も無い
奥のピークが黒滝山 2つ目の小ピークを越える 
黒滝山への最後の登り 黒滝山山頂。全く岩っぽくない
山頂標識 黒滝山北西鞍部から南西に延びる谷を下った。藪無し
登山道に合流 不動寺分岐を通過して鷹ノ巣山方面へ。752m鞍部の標識
五老峰方面。また雪が降り出した 馬の背最初の梯子
このピークまでが馬の背。梯子、鎖場の連続 鎖場
急角度の梯子 馬の背を通過すると普通の尾根に変わる
岩のピーク手前の案内標識 鷹ノ巣山方面は左を巻く
岩を巻き終わって南側から岩を見上げる 眼下には鷹ノ巣山
鷹ノ巣山分岐。まずは五老峰へ向かう 860m峰の祠
このピークが五老峰 五老峰直下。右から回り込めば山頂
五老峰山頂。現地標識は観音岩 五老峰から毛無岩、トヤ山方面
五老峰からの360度パノラマ展望(クリックで拡大)
五老峰北西の850m鞍部から見た鹿岳、四ッ又山 鷹ノ巣山分岐から鷹ノ巣山方面へ下る
最初は普通の尾根 時々岩場が登場するが危険はない
この看板で岩の左をトラバース ここで岩を横断。雪が乗ったら通過不能だろう
下底瀬への登山道は廃道化 南斜面から尾根に登り返す
上底瀬分岐。こちらの道は生きている 上底瀬へ下る登山道
鷹ノ巣山への登り返し 鷹ノ巣山山頂
「すかいさん」の山頂標識 鷹ノ巣山から見た下底瀬集落
鷹ノ巣山から見た西側の展望。雪で白く煙っている
鷹ノ巣山から見た五老峰 五老峰の稜線まで登り返す
馬の背の中では雪が乗ったこの岩が一番危険だった 馬の背から見た不動寺(赤い屋根)
馬の背から見た西側の林道工事現場 752m鞍部。林道のような広い道は西へ続く
不動寺分岐 不動寺入口に到着
不動寺山門。帰りは開いていた 駐車場入口。この先は駐車場は無い
不動寺開門時間はAM8:00〜PM4:00 駐車場到着。他に車は無し


・先週までははるばる栃木県まで毎週のように通っていたが、さすがに片道250kmを一般道では遠すぎて運転だけで疲れてしまう。先週で前日光、宇都宮近辺の地形図記載の山は登り終わったのでここで一区切りとし、今週はもう少し近い山にしたいと考えた。残念ながら日本海側は今週末は強い寒気が入って大雪の予報であり、行っても悪天候だし最悪の新雪ラッセルが待っているので論外。日本海側より雪が少ない岐阜県も大雪の予報でありパス。結果として雪が無い関東地方で未踏がある西上州となった。

・ただし、西上州でも岩が厳しい山は今の私には無理なので行き先が限られる。妙義山は対象外であり、他の登り残しは南牧村の黒滝山近辺と毛無岩、立岩、それに碧岩、大岩くらい。西上州の山の場合は事前にネットで危険度を読まないと私では歯が立たないことがあるのは経験済みであり、調べてみたら碧岩はかなりヤバそうであった。しかもアプローチが北向きの沢でありこの時期は凍結が予想される。よって消去法で黒滝山から立岩にかけてとなった。

・黒滝山近辺では黒滝山、五老峰、鷹ノ巣山の3つが接近しておりこれらは簡単に登れそうだが、毛無岩と立岩はどうだろうかとネットで検索してみると、岩場はあるものの意外と簡単に登れるようで一安心。ただし、雪が残っていないかどうかが気がかりだ。簡単な岩でも半端に雪が付いていると登れない可能性が出てくる。

・次にルートの検討。黒滝山と抱き合わせで登るなら毛無岩が可能と判明。南牧村/下仁田町境界稜線には荒船山への縦走路があるからだ。ただし、今は整備されていないようで歩く人の数は相当少ないらしい。それでも記録をいくつか読んだ限りでは登山道自体に危険個所は無いように読み取れた。

・黒滝山から毛無岩に至る途中にある1220m峰は地形図には山名が記載されていないが、日本山名事典には「トヤ山」と記載されていることが判明したので、ここにも立ち寄ることにした。全部の山頂に登頂できれば合計5山が稼げる効率の良いルートである。立岩は少し離れた場所にあり、黒滝山と抱き合わせで日帰りは厳しいと判断し、ここだけ後日個別に登ることにした。

・宇都宮と比較すれば西上州への所要時間は半分以下の2時間半。今回の登山口は黒滝山、五老峰、鷹ノ巣山へ登る都合上、東側の不動寺入口となる。上野村方面に通っていた頃にはいつもは通過した県道分岐から右に入り、県道ながら細い道を上がっていく。最初は周囲に雪は無かったのが標高が上がると道路脇に見られるようになる。岩のある西上州で雪があるのは良くない状態だが、毛無岩のルートは概ね南向きや東向きの尾根なので雪が消えている可能性もある。まあ、現場でどうしても通過が危険だと判断したら雪が消えた時期に再訪してもいいだろう。

・薄っすらと雪に覆われた黒滝山九十九谷登山口駐車場と書かれた広場があったが、県道終点までまだ距離があるので無視して進む。最後はジグザグに道路が上がると最初の駐車場が登場し、そのすぐ先で最上部の駐車場が登場。これより先は駐車場は無いとのこと。案内看板を見る限りここは参拝者及び登山者両方のための駐車場であり、安心して駐車できる。今は夜中なので車は皆無。一番奥に駐車して酒を飲んで寝た。

・寝る前に装備の準備をし始めたらウェストポーチを忘れてきたことに気付いた。あの中には一部の防寒装備、ラジオ、ヘッドライト、方位磁石等が入っていたが、それらの予備は車の中に常備しているので問題無し。ただし、ウェストポーチが無いと収納場所はザックしかないので出し入れが面倒になるのが難点だ。デジカメは電池が老朽化してポケットに入れて温めておかないと冬は使えないので、ウェストポーチが無くても問題無し。

・翌朝、冷え込みはそれほどではなくフロントガラスの水滴は凍っていなかった。今回は膝の怪我から復帰後、初めてまともなザックを背負うことにした。これは稜線では冷たい西風が予想され、防寒装備がいつもより必要だったことと、アイゼンを持つためだ。足元はいつもの防寒長靴でアイゼンを着用可能か不安があったため、出発前に実際に装着してみたところ問題なく使えそうで一安心。今回持っていくのは長靴でも脱げにくい構造の10本爪アイゼンとした。多少重いが安全のためには仕方ない。それと念のためにお助け紐も持っていくことにした。本当は体重が十分支えられる太さのロープを持っていくつもりであったが、家を出発するときに忘れてしまったのであった。30mの長いロープは車に積みっぱなしであるが、さすがに過剰で重いのでやめておくことにした。

・朝飯を食って出発。昔は使えた荒船山までの登山コースの案内図があり、その根元には不動寺の開門時間は8:00〜16:00で、それ以外は立入禁止とあった。登山道が不動寺の中を通っているのか知らないが、もしそうだとしたら迂回する必要があるが、周囲は岩が目立って簡単に巻けるかどうか分からない。とにかく行ってみるしかない。

・舗装道路をジグザグに登って建物が登場すると不動寺入口で、幸いにも登山道は山門の目の前を通過するだけであった。なお、この時間は門は閉じていた。

・山門前を通過して杉の植林帯に入る。道は明瞭で比較的良く歩かれている雰囲気がある。ジグザグって林道のような広い道に出ると左は「六車」、右は「荒船山」と出ていた。六車がどこを差すのか知らないが、地形図を見る限りは左は鷹ノ巣山方面だろう。まずは毛無岩に向かうので右へ入る。

・しばらくは広い道を進むが部分的に崩れたりして不明瞭な場所がある。特に笹が生えた個所はルートが良くわからず、笹の「島」を右に迂回したらその上部に道の続きがあった。この先は普通の登山道の道幅に変わる。おそらくここまでは廃林道だったのだろう。お寺には車道は繋がっていないが、おそらく752m鞍部から西側に繋がっているのだと思う。

・登山道の幅に変わってからの方が道が明瞭になったような気がして安心して歩けた。ネットの記録では荒船山へのルートは廃道化しているとのことだが、ごく一部の崩壊箇所を除いて今でも十分利用できるくらいの道形は残っていた。先週までは宇都宮の篠井富屋連峰で竹藪に悩まされたが、西上州ではそんなことはなく快適に歩けた。

・黒滝山に続く尾根はいつの間にか通過してしまい、初めて狭く明瞭な尾根に変わった箇所で地形図を広げて現在位置を確認した。この頃には天候が悪化し始めて細かな雪が舞い始めた。朝は快晴だったのだが。まさか西上州で冬型の気圧配置による降雪があるとは思わなかった。さて、この状況で毛無岩に登れるだろうか? たぶん奥に行くほど雪の降り方は激しくなるだろう。この付近では地面を僅かに白くする程度で、まだ積雪はゼロと言っていい程度だ。北斜面では古い雪が残っている場所があるが、鹿の足跡がたくさん見られたが、人間の足跡は見られなかった。

・登山道には手すりがあったり橋が架かっていたりと昔の整備の良さが今でも感じられるが、見た感じではそれらの手入れは今はなされいないようだ。それでも道が崩壊しているのは毛無岩までの区間では黒滝山北西側の966m峰を巻く場所に1箇所だけであり、十分に利用価値がある。

・ネットの記録では登山道はトヤ山の南側を巻いてしまうとのことで、西側稜線にある踏跡入口を探して入らなければならないが、意外にもその場所は地形図を見るまでもなくすぐに分かった。この頃には雪は本降りで北風も強く吹雪模様で地形図を広げるのが面倒なので地形図で確認せずに踏跡に入ったが間違っていなかった。その前に上下とも雨具を装着。これは濡れるのを防ぐためではなく風対策だ。ここまで北寄りの風は山でブロックされて直接体に吹き付けることは無かったが、ここからトヤ山まではもろに風を受ける稜線上に入るためだ。温度計は故障していて指し示すのは0℃付近だが、おそらく実際には-5℃前後だろう。ザックに付着した雪は全く解ける気配がない。防寒長靴は優秀で、この温度でも足の指の冷たさを感じない。私は極度の冷え性なので末梢がすぐ冷えてしまい、普通の登山靴では冬場は靴下用の使い捨てカイロ必須であるが、今の長靴ではそれが不要。ただし、長靴は重いのが難点で、おそらく登山靴の2倍近い重さがあるだろう。

・登山道を離れて鋭角に右に曲がって稜線に乗るとすぐに傾斜がきつい岩尾根に変わる。登ろうと思えば登れないことはない岩場だが、半端に雪が付いた今の状態ではイヤだなぁと感じるくらいの厳しさはある。幸いにして踏跡は尾根の左側(北斜面)を迂回するように付いていた。北斜面なので古い雪が残っており長靴ではちょっと不安があったが、凍結はしていなかったので灌木に掴まりながら慎重に上がっていく。北斜面はあからさまな岩場ではないが、地面のすぐ下は岩らしく低い灌木しか生えていないので滑ったらちょっとヤバそうな場所だった。

・北斜面の迂回個所は長続きせず尾根に復帰。この後は危険個所は無く尾根通しで歩くことができた。踏跡は山頂まで続いていて、東端の微小ピークがトヤ山山頂であった。山頂標識はおそらく「Gさん」のものだろう。これを見るのは栃木県内の3D標識より久しぶりだ。山頂の西側には低い立木があるが、東側は概ね開けて展望が良さそうな場所だったが、今は冷たい北西の風と雪が吹き付けて景色が霞んでしまっていた。

・岩場のトラバースを慎重に通過して縦走路に戻り、次は本命の毛無岩。そこに至るまでは地形図を見る限りは穏やかな稜線が続くはずだ。

・地形図には記載されていないが1160m鞍部の西側で大きな送電鉄塔が立っている。先週以前は宇都宮で巨大送電鉄塔を何度も見たが、あちらは福島の原発からの送電用で、ここにある送電線は柏崎刈羽原発からの送電用である。どちらの原発も今は全て停止しているので、今流れている電気は大した量ではないだろう。送電線巡視路は稜線を横断して南北に延びていた。

・送電鉄塔から毛無岩までは概ね稜線上を進むか南側直下をトラバースするように道が付けられていて、トラバース区間では冷たい風雪を避けられるのがありがたい。1275m峰を越えると毛無岩らしき頭が平らなピークが姿を現す。雪で視界が悪いがガスはかかっていないので視程は1km近くあって前方の様子が見えてありがたかった。おかげで地形図を見ることなく縦走路が毛無岩を巻き始める場所が分かった。

・登山道は毛無岩手前の1240m鞍部から大きく南を巻き始めるが、その分岐点には壊れた標識あり。完全に朽ち果てていて直進する尾根が毛無岩とは読み取れないが、常識的に考えて標識が必要なのは毛無岩直登ルート分岐くらいであろう。私は道の詳しい付き方を知らないので、この先で尾根に復帰するかもしれないと思って分岐は見送って先に進んだが、本格的に登山道が巻き始めることが明確になった時点で尾根に乗った。藪は無いのでルート変更は簡単である。

・尾根上にも明瞭な道があり藪は皆無だが、徐々に岩っぽさが増してくる。思ったよりも雪が残っていて、凍ってはいないが長靴では滑るようになってきた。本格的に岩っぽくなる小ピークで10本爪アイゼンを装着。この先は痩せ尾根混じりで要注意箇所だろう。積雪が5,6cmある古い雪に対してはアイゼンはよく効くが、新たに数mm程度積もった新雪が岩の上にあった場合はアイゼンは効かないので、この先の状態が心配である。どうしても危険度が高すぎる場所が登場したら今回は諦める予定だが、山頂がもう目の前に見えた状態なのでどうにかして突破したいものだ。重い長靴にアイゼンを装着するとさらに重くなった。スノーシューの重さに慣れるトレーニング代わりか。

・遠目に見た尾根は痩せてヤバそうだったが、実際に歩いてみると意外と大丈夫で最後の登り直下までやってきた。この先はトヤ山同様に尾根直上は岩場で登山道は北側斜面を迂回して急登しているが、幸いにしてここは岩ではなく灌木の隙間を縫っているので灌木に掴まって安全確保できるし、古い雪があるのでアイゼンが効いて安心して登ることができた。なお、雪の上にある足跡は人間のものは無かった。でも動物の足跡は多数あり、動物も岩の稜線を避けて登山道を利用しているようだ。

・再び尾根上に復帰すれば登りはおしまいで、遠目に見たときに平坦に見えた山頂部を西へと進む。多少痩せた個所はあるが概ね危険個所は無しと言っていいだろう。微かに登っていき最高点の岩に山頂標識が乗っていた。この先はここより高い場所はしばらく存在せず、間違いなく毛無岩山頂だった。立木は皆無で360度の大展望だが、今は吹雪模様で遠望は効かず長居できる状態ではない。南側がすっぱり切れ落ちているが、山頂はそれほど痩せていないので恐怖感は無い。

・寒すぎてのんびり休める状況ではないので写真撮影だけして下山開始。下りの方がヤバいので木に掴まりながら慎重に、時にはバックを交えて安全な箇所まで下り、縦走路に合流してアイゼンを外し、軽く飯を食った。ここまで3時間半ほど休まず歩き続けたので、さすがに休憩したいところだった。しかし風が避けられる場所を選んだとは言え、雪が降りしきる中、気温は-5℃前後で体を休めるとすぐに寒さがきつくなり、短時間の休憩で切り上げて出発した。

・次の目的地は大きく戻って黒滝山。地形図を見ると登山道が尾根を越えて谷筋を下り始める箇所で尾根に乗り移るのが効率的だろう。966m峰の巻道で地形図を広げて現在位置を確認。この頃には雪は止んで青空が広がり日差しが温かくなった。このまま天候が回復傾向なのか、それとも単純に南に移動して雪雲から離れたからなのかは分からない。966m峰を巻き終わって細い尾根を渡った先で尾根から右の斜面へ登山道が離れる箇所で黒滝山目指して尾根を直進。尾根上には明瞭な道があるが案内標識等は無い。地形図を見ないと黒滝山入口とは分からないだろう。

・植林された尾根を進むと小ピークを2つ越えてから黒滝山の登りにかかる。この頃には道があるような無いようなだが、植林が続いて藪は皆無で歩きやすい。

・最後の登りでピークに達すると黒滝山の山頂標識が登場。地形的にも間違いなくここが山頂である。毛無岩やトヤ山と違って山頂は岩っぽさは皆無で植林に囲まれて展望も日差しも無い。この時間帯はもう雪が止んで日差しがあり、落葉樹林なら日向ぼっこで暖かいだろうがここでは檜にブロックされて寒かった。それでも残りのパンを齧って小休止した。

・黒滝山からは最初の鞍部まで尾根を戻ってその後は左側(南側)の谷地形を下った。ここも檜植林で藪は皆無で好きなようにルート取りが可能。地形図通りに谷底で登山道に合流した。谷底は風がブロックされて体感温度が上がるのがありがたい。

・縦走路を不動寺方向に戻りながら今後の行動を考えた。少なくとも五老峰までは登りたいが、最後の鷹ノ巣山は五老峰から標高差100mほど下るため帰りは登り返しが必要。鷹ノ巣山だけなら登山口がある上底瀬集落から登っても標高差200m程度なので、明日登っても大した労力にはならないだろう。しかし面倒なのは明日の食糧調達で、下界まで戻って再び山奥に車で上がる必要があることで、ガソリンの無駄にもなる。今はガソリン価格が記録的高値であり、節約できるのならそうしたい。今のところ時間的には余裕はあるが、体力、気力的にどうなるであろうか。五老峰に立った時点で決めよう。

・往路を戻り不動寺分岐を通過して広い道を直進すると752m鞍部で、登山道は左の尾根に移り広い道は西へと向かっているが、松の倒木で塞がれていた。ここには「馬の背」の看板あり。この名前からして痩せ尾根が登場するのだろうか。今はまだ普通の尾根である。

・進んでいくと看板通りに突如として岩の痩せ尾根に変わる。梯子が登場したり転落防止の鎖の手すりがあったり、岩のトラバースでは鎖が登場したりと馬の背の名に恥じない。大半の場所は問題なく通過したが、表面の凹凸に乏しい丸い岩を越えるところだけは緊張した。表面に雪が乗っていて、ただでさえ足をかける場所が浅くて滑りやすいのに雪の影響でグリップが効くとは思えない状況だ。もちろん僅か数mmの積雪ではアイゼンは効かないので出番は無し。岩のてっぺんからぶら下がっている鎖を強く握りしめて、足が滑って宙づりになっても落下しないようにしたが、幸いにして足が滑ることはなく無事通過できた。

・その先には岩に立てかけられた急な梯子があり、それが危険地帯の最後だった。これより上部は普通の尾根に変わり歩きやすくなる代わりに立木が目立ち展望は悪くなる。

・尾根が平坦になると案内看板が登場。直進は見晴台で、左に下る道には鷹ノ巣山の文字が見える。鷹ノ巣山への下りは右(西)のはずで東に下る道はないはず。ということはここは目の前のピークを巻くための道らしい。こちら側(北側)から見ると岩っぽくなく普通のピークにしか見えない。

・迂回路は最初だけ下り坂で雪が乗ってイヤらしいが、崖側にはフィックスロープが張ってあるのでそれを握って安全確保。見た目よりは滑りやすくはなく、落ち葉を蹴散らしながらトラバースしていく。南側に回り込むと顕著な岩壁に変わり、これではてっぺんから南へ下るのは不可能であり、迂回路を設けるのは当然だった。

・尾根に復帰して僅かに進むと目の前の860m峰の右を巻くような道と尾根上の道に分岐。ここが鷹ノ巣山分岐だ。まずは五老峰を目指して尾根を直進して860m峰へと登る。この方向の案内は「九十九谷」となっていた。残念ながら地形図には九十九谷の名前が書きこまれていないのでどの沢が該当するのか不明だが、おそらくは焼山峠から北東に延びる谷ではなかろうか。

・860m峰には祠があり、ここにも鷹ノ巣山方面の分岐があった。というよりもここが正式な入口でさっきの巻道は近道なのだろう。このピークは特に岩っぽいところは無い。標識の五老峰方向は「観音岩」となっており、鷹ノ巣山方向に「九十九谷」の文字があった。あれ? 焼山峠の北東予想は外れだったのか。しかし地形図をよく見ると焼山峠を越えて下底瀬集落へ下る破線が鷹ノ巣山から下る道に繋がっており、私の予想が正しい可能性は残った。正解はと言うと私の予想は外れで、860m峰から西に落ちる谷を指していた。ちなみにこの谷には登山道は無く、ロッククライミングの場として有名らしい。

・さらに先に進んで登りにかかると岩が登場。ここが五老峰なのだろう。往路は岩の北側を巻いて岩の切れ目から南側へと回り込んで最高点に立ったが、岩が登場したらそのまま直進して登るのが正解だった。この岩は比較的凸凹があるので上り下りしやすい。

・岩のてっぺんが五老峰山頂で現地の標識は「観音岩」だった。地形図ではここの南側の絶壁に「幕岩」と表記されている。山頂には石仏(観音様?)あり。岩のてっぺんなので邪魔するものが無い大展望が広がるが、また雪が舞っているので特に北西側は雪で煙っている。午前中に登った毛無岩、トヤ山も見えていた。

・思ったよりも体力は残っていたのでこのまま鷹ノ巣山に向かうことにした。ここから標高差100mを下ったところが鷹ノ巣山なので帰りは100m登らなければならないが、標高差100mならば所要時間は15〜20分であろう。

・860m峰に戻って西へ下る道に入る。地形図を見るとこの尾根はゲジゲジマークだらけだが、崖は北面のみで尾根直上や南斜面は危険はない。所々で表面がスベスベの岩が登場するが、これはそそり立っているのではなく地面を覆っているので通過は難しくない。でも半端な雪が張り付いていると始末が悪そうだ。トヤ山付近では地面に新雪が積もっていたが、この付近では今は雪が舞っていても地面に雪は見られない。「要注意!!」の看板が立つ大きな岩は尾根直上を進まずに南を巻いたが、最後だけ凸凹に乏しい岩の表面を横断。斜めになっているのでいやらしいが滑ることなく通過できた。

・登山道は尾根南を巻いて最低地点で下底瀬集落への分岐が登場するが×印がされており、今は廃道化しているようだ。登り返して尾根に復帰し、少し進むと上底瀬集落への分岐が登場。ここは現役の登山道だった。

・この分岐から僅かな登り返しで鷹ノ巣山山頂に到着。山頂は岩っぽさは感じないが西側は展望が大きく開けているので、西側は崖になっているようだ。雪は相変わらず舞って北寄りの冷たい風で寒い。この山頂には「すかいさん」の標識があった。これも見かけるのは久しぶりだ。今でも生き残っている標識は少ないであろうが、刃物ヶ崎山のは残っているであろう。

・これで全ての目標達成。後は帰るだけだがまずは標高差100mの登り返し。急ぐ必要はないのでゆっくりと登る。馬の背を下っていると西側から重機の音がしたので見下ろすと林道工事中。もしかしたら752m鞍部まで林道を敷設するのかも。まさか不動寺まで道を繋げたりして。

・帰りの不動寺の山門は開いていた。舗装道路をジグザグに下って駐車場に到着。他に車がいると思っていたが私の車だけ。どうやら真冬の西上州は登山者が少ないらしい。まあ、今回のように積雪があると難易度がぐっと高くなるからなぁ。でもこの付近では南岸低気圧が来ないと雪になることはさほどないように思える。今日の降雪は例外的な部類だろう。とにかく今日は寒かった!

 

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